大判例

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富山地方裁判所 昭和28年(ワ)36号 判決

原告 須田藤次郎

被告 井上知行

一、主  文

被告は原告に対し富山市総曲輪百九十九番より二百三番まで合併の二宅地八十四坪九合の富山県富山都市計画上の換地予定地第一工区第五回第二〇六街廓六十四坪八合の宅地を該地上の別紙目録<省略>記載の建物を収去して明渡すべし。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決及び担保を条件とする仮執行の宣言を求め、その請求原因として、富山市総曲輪百九十九番より二百三番合併の二宅地八十四坪九合は原告所有のものであるが、昭和二十年の戦災直後被告に対し無償でこれを使用せしめ、被告は該宅地の上に別紙目録記載の建物を建築してこれを所有しているが、原告は該宅地を必要とする為昭和二十七年二月一日書留内容証明郵便を以て右使用貸借解除の意思表示を為し、該書面は即日被告に到達し、茲に被告の該宅地使用の権利はなくなつた。そこで原告は被告に対し該宅地から別紙目録記載の建物を収去し、該宅地の明渡を求め昭和二十七年三月十四日富山地方裁判所に訴を提起し、同裁判所昭和二十七年(ワ)第三五号事件として審理の結果同年五月三十日原告勝訴の判決の宣告があり、該判決は同年六月二十三日確定した。そこで原告は富山地方裁判所執行吏高桑宴友に委任して右判決の執行をなしたところ、同年七月十五日の執行に際し示談解決したいと執行延期を求めながら、原告に何等交渉することなく昭和二十七年九月末頃突如右建物を右宅地の富山県富山都市計画上の換地予定地である第一工区第五回第二〇六街廓六十四坪八合の宅地の別紙図面<省略>表示のところに移築した。然しながら被告が従前の宅地につき既に使用権を喪失した以上は、該換地予定地についても何等の権原を有しないものである。よつて被告に対し右換地予定地から該建物を収去して、右予定地の明渡しを求める為本訴に及ぶと述べ、被告の抗弁は理由がないと述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告の請求はこれを棄却するとの判決を求め、答弁として原告主張の事実中、富山市総曲輪百九十九番より二百三番合併の二宅地八十四坪九合は公簿上原告の所有であること、右地上に元被告が建物を建築所有していたこと、及び昭和二十七年二月一日原告主張の如き内容証明郵便が来たこと、原告主張の如き訴訟に於て判決があつたこと、原告主張の第一工区第五回第二〇六街廓六十四坪八合宅地が右百九十九番より二百三番まで合併の二宅地八十四坪九合の富山県富山都市計画上の換地予定地であること、はこれを認める。被告が右百九十九番より二百三番まで合併の二宅地八十四坪を使用貸借したことは否認する。原告と被告とは同窓生で親友であつたところ被告が戦災により自己の家屋焼失した為原告に懇請し、原告から右百九十九番から二百三番まで合併の二宅地を建物建築の目的で宅地目測百坪として一坪単価金二千円総代金二十万円として買受ける売買契約を締結し、右代金は原告の都合出来次第支払う約束で右土地の引渡を受け、昭和二十二年始め右地上に本件係争建物を建築したものである。昭和二十三年被告は原告の承諾を受けて原告に対し、訴外立山重工業株式会社振出の封鎖小切手額面金二十万円を交付し、右土地代金の支払を了した。ところがその頃から右土地附近の市価が昂騰した為か原告は右小切手交付後十数日に右小切手が封鎖の小切手だから受取れないと返還したものである。然し既に右土地の引渡は完結し、被告は右土地の財産税の申告をしており右土地所有者として、富山市都市計画委員の選挙名簿にも登載されたものである。しかして、原告主張の訴訟事件には被告が長期出張不在の為出頭できず、判決確定後右判決を知つたものである。しかも右判決は右宅地に対する換地指定後為されたもので、原告は訴提起当時から従前の土地に対し使用収益権がなく右土地は都市計画上道路敷地で富山県知事の管理に属していたものであり、該判決は被告に対しても富山県知事に対しても効力がなく本件訴訟に対しても覊絆力はない。更に都市計画に於ける換地移転の場合従前の土地の上に存した建物が換地上に移転された場合は旧土地に在る建物の所有者がこれを換地上に移転移築する目的でこれを取毀ちその材料の大部分を使用して新な土地の上に同一種類構造の建物を築造したときは、その建物の同一性を失わないものである(昭和八年三月六日大審院判決)から従前の建物に対する判決の効力は換地上の建物に及ぶものである。従つて本件訴は一事不再理の原則に反するものであると述べ、甲号各証の成立は認めると述べた。

三、理  由

富山市総曲輪百九十九番より二〇三番合併の二宅地が登記簿上原告所有名義となつていること、右地上に元被告が建物を建築所有していたこと、原告主張の如き訴訟に於て判決が宣告されたことは当事者間に争いなく、成立に争いのない甲第二号証の一、二によると右訴訟は昭和二十七年五月三十日、当裁判所に於て被告は原告に対し、前記総曲輪百九十九番より二〇三番合併の二宅地を該地上の別紙目録記載の建物を収去して明渡すべし、訴訟費用は被告の負担とする旨の判決が宣告され該判決は昭和二十七年六月二十三日確定したことを認めることができる。しかして被告が右宅地の富山県富山都市計画上の換地予定地第一工区第五回第二〇六街廓六十四坪八合の宅地に別紙目録記載の建物を移築したことは被告の明に争わないところであるから、これを自白したものと看做す。

被告は旧土地に在る建物の所有者がこれを換地上に移転移築する目的でこれを取毀ち、その材料の大部分を使用して新な土地の上に同一種類構造の建物を築造したときは、その建物の同一性を失わないものであるから従前の建物に対する判決の効力は換地上の建物に及ぶものであるから、本件訴は一事不再理の原則に反するものであると抗弁するので、按ずるに前記建物収去土地明渡事件の右確定判決は被告の当該建物を所有する為、その敷地である該土地を占有する権限なきことを確認したもので、該事件の請求の目的物は精確に言へば、建物を所有する為めの土地使用権にして該使用権を包含する土地所有権即土地そのものも亦請求の目的物と言うことができるが、土地の上に存する建物そのものは請求の目的物と言うことができない。右判決が前記建物の収去を命ずるのは右土地の不法使用を排除する手段を明確にしたものに過ぎない。即ち該土地明渡の執行手段として収去命令により取り払うべき建物を確定した関係にすぎないから、該建物を以て右確定判決の目的物となすことを前提とする被告訴訟代理人の前記見解は採用することができない。

しかして、前記確定判決に於ては被告の右総曲輪百九十九番より二百三番合併の二宅地についての不法使用を排除して原告に対し、その土地明渡しを命じたものであるから、被告は右確定判決の口頭弁論終結前に争い得た事実を以て原告に対抗し得ないこと明白であるから、右確定判決の最終口頭弁論終結前に争い得たことを前提とする原告に右宅地に使用権のないとする答弁事実は爾余の判断をするまでもなく、失当として採用できない。

しかして、特別都市計画法第十四条第一項により従前の土地の所有者及び関係者は換地予定地の指定を受けた日の翌日から、同法第七条第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十条第一項の規定による換地処分が効力を生ずるまで換地予定地の全部又は一部について、従前の土地に存する権利の内容たる使用収益と同じ使用収益をなすことができる旨規定されているので、前記総曲輪百九十九番より二百三番合併の二宅地について被告に使用権の存在しないことが確定した。以上右宅地の富山県富山都市計画上の換地予定地第一工区第五回第二〇六街廓六十四坪八合の宅地についても何等の使用権を有しないことは明白である。尚又右換地予定地は単なる予定地で換地として確定したものでないから、前記確定判決の訴訟とは二重訴訟の関係に該らないものと解する。従つて前記判決により収去を求められた建物を該換地予定地に移築してこれを占拠することは不法と言わねばならないから被告は原告に対し、該換地予定地を該地上の別紙目録記載の建物を収去して明渡す義務あるものと言わねばならない。

そこで原告の本訴請求を正当として認容し、仮執行の宣言はこれを不相当と認めるのでこれを却下し訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 高沢新七)

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